無料で楽しめる民放ラジオテレビの収入源は広告
日本で初めての民間ラジオ放送が始まる1年前の1950年、当時、電通の社長であり、東京放送創立準備委員長を務めていた吉田秀雄は、民放開始に備えた放送法案審議の参議院公聴会に招かれ、放送法の第1条にある「放送における表現の自由」について意見陳述した。この放送法における「放送における表現の自由」とは、「NHK以外の民間事業者にも電波の使用を許す」というものです。こちらにこの意見陳述の全文を転載しますのでご参照ください。
吉田は、NHKは受信料という大きな安定財源を持つのに、民間放送は広告収入だけで運営されることを前提にしているため、民間放送局が乱立すると広告収入が各局に分散化して共倒れになる可能性が高いことを当時の日本の広告マーケットの現状から理路整然と説明し、当面は1地区1放送局での民間放送のスタートを提案した。そして、この吉田の提案が採用されることになった。
電波利用は国の許認可事業で、元々、NHKしかその利用を認められていなかった。その電波利用を民間に開放する。そして民放の創設時に、広告がその財源として充てられた。
しかし、民放は国の許認可事業であり、放送法に従って、その報道活動は適正に行われる必要がある。当然、広告の影響を受けてはならないことになっている。民間放送局は、良質な番組を国民に提供し、その評価の結果として多くの国民が番組を視聴する。多くの視聴者を得た結果として広告収益の増加につながるものでなければならい。
また、広告に関しても、民放は広告表現の審査を厳密に行っているだけでなく、広告を取り扱う広告会社についても考査を行なっており、広告に詐欺業者が紛れ込むことはない。
無料の検索サービスの主要な収入源は広告
わたしたちは、無料でGoogleの検索サービスやInstagramなどのSNSが利用できる。それは民放同様にそのサービスが広告を主要な収入源として利用しているからだ。
Googleは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」を企業のミッションとして、サービスを提供している。その根幹にあるのは、人々が検索する情報にマッチする検索結果を提供する検索アルゴリズムである。そして、Googleのサービスは広告収入で維持発展している。
従って、Googleの無料の検索サービスも民放同様に広告で支えられていることになる。Googleもラジオテレビ同様にその検索結果に広告が影響を与えないように、純粋な検索結果と広告枠を明確に分けている。
テレビやラジオには前述のようにシステム的な広告主および広告表現の審査対策が整っているため、番組や広告に詐欺情報が紛れ込むことはないが、Googleの検索結果はどうなのだろうか?
テレビ同様のパブリックサービスとなったGoogleの検索結果に詐欺サイトが表示される
もはやパブリックサービスとなったGoogleの検索であるが、その検索結果に詐欺サイトやフェイクニュースサイトが紛れ込むことがあり、「SEOポイズニング」などとその問題が指摘されている。
詐欺業者は、セキュリティの甘い既存の正規サイトをハッキングし、そのページを検索結果に残したまま、クリックした瞬間に詐欺サイトへ飛ばす設定(リダイレクト)を仕込む。Googleは「内容のある正規サイト」としてインデックスしているため、表示されてしまうのである。
GoogleはAIを活用して信頼性を判断しているが、サイト運営者の実在性確認を行うことが現時点ではできないため、その信頼性判断にも限界がある。
また、詐欺業者はAIに「高品質なサイト」と誤認させるよう、大量の偽レビューや関連性の高いキーワードを自動生成して対抗している。
もちろん、Googleも、この問題を見過ごしているわけではない。この問題に対処するために毎日数十億件のスパムを探し出し、ブロックしているものの、新しいドメインや手法が次々と生まれるため、システムが「有害」と判断して除外するまでに数時間のタイムラグが発生し、その間に検索結果に載ってしまうのである。
しかし、普通の消費者は、テレビ局同様に信頼性のあるGoogleの検索結果に詐欺情報が載るなどとは想像することもないだろう。
しかし、事実は違うのである。Googleでも見抜けない詐欺情報がGoogleの検索結果に紛れ込む可能性がわずかではあるかもしれないが、あるという事実を知るべきだ。
無料で情報提供するホームページの主要な収入源も広告だが…
国によって事情は異なるが、日本では新聞社を規制する法律はない。日本の新聞社は日本新聞協会という業界団体を共同で運営し、団体に参加する新聞社の総意として新聞倫理綱領を作り、その遵守を参加新聞社に求めている。業界の自主規制である。
伝統的な多くの新聞社などは購読料を支払っていないと、全ての情報を読むことができないが、今や、新聞社以外で世界のニュースを無料で発信するさまざまなインターネットニュースメディアがある。それらの発信者の主要な収入源は購読料ではなく、広告である。Googleなどのプラットフォームの広告枠をページに設置して広告収益を得ている。
もちろん、インターネットのニュースメディアを規制する法律もない。しかし、それらの中で、倫理綱領を公開し、その遵守を読者に約束しているメディアは多くはない。組織的に運営されているメディアならともかく、広告収益獲得目的で個人が運営する形態のメディアにそのような問題意識を持つものは少ないだろう。なぜなら、所詮、広告収益の獲得が目的なのであって、正しいニュースの提供そのものを生業としていないのだから。
伝統的な新聞社とインターネットニュースメディアの違い
歴史ある信頼できる新聞社には、必ず編集方針があり、報道倫理の遵守をその記者に求めている。一方、メディアを称するインターネットWebサイトの中には、必ずしも、既存の報道機関が培ってきた報道倫理を重要視していないものもある。
信頼されてきた報道機関でも誤報をしないわけではないが、彼らは誤報をした場合には、訂正や記事の削除などを「報道」する文化がある。それは報道人、報道メディアとしての矜持である。
その矜持の根底にあるのは、自らの記事が広告ではなく、読者の購読料で支えられている事実である。
従って、購読料ではなく広告を主要な収入源とするインターネットメディアのニュース製造現場に、既存の報道機関にあるような報道陣としての矜持を求めることは無理がある。
つまり、広告収入が得られればよいのではれば、誤情報を発信しても、誤報を「報道」する動機は生まれ得ないだろう。
インターネット上の情報の信頼性確認には、セルフ・ファクト・チェックが必要。
YouTubeのチャンネル、Xの投稿、ブログなどさまざまな手法でニュースが日々インターネットに発信されている。
私見であるが、それらの多くは、取材した根拠のある情報ではなく、多くが意見でしかないことが多い。それは、前述したように、インターネットの情報が広告収益目的で発信されているケースが多く、規制の対象にもなっていないからだ。
そして、残念なのは、間違った情報を発信した人がそれを訂正した事例を私は知らないことだ。
もちろん、インターネットは有益な技術だし、YouTubeチャンネルにも役にたつ情報が多い。しかし、わたしは、有益なものの割合は決して多くはないように感じている。
私自身、インターネットで知った情報は無意識に信頼せず、セルフ・ファクト・チェックを行うようにしている。
私の場合、まずは、「誰が言っているのか」「その人はどういう経験を持っているのか」「ニュースソースを公開しているのか」などから、いろいろと調べていく。セルフ・ファクト・チェックをすれば、詐欺情報、偽・誤情報に惑わされることもなくなるはずだ。
参考文献
- 国会会議録検索システム ,「第7回国会 参議院 電気通信委員会 第3号 昭和25年2月1日」
- テレビ東京, 「広告会社様向けマニュアル」
- 日本新聞協会, 「新聞倫理綱領」